山麓に住む人々の視線で御嶽山噴火を考える

 御嶽山は、1979年に有史初の噴火となってから、わずか35年目、2014年9月に再び噴火した。この35年間に噴火は極小規模なものを含めて4回。そんなことよりも、今回は60人を超える登山者が犠牲になってしまった。1979年の噴火では、噴火から2ヶ月も経たないうちにスキー場を営業した。そして、翌年には多くのスキー客が戻ってきた。しかし、今回は、、、

 噴火後、国や県は観測体制や情報伝達方法を改善すると口を揃えた。しかし、4ヶ月近くが経過しながら、観測網が伝達方法が具体的に改善された話は伝わってこない。そんなことをしていると、本当に御嶽山と共に暮らしてきた山麓の村々が本当に暮らせなくなってしまいそうだ。そこに生活する人々の視線で御嶽山噴火を考えたいとサイトを設けた。(2015/2/22)

 

地震・火山・津波に何もいえない地方気象台

 1月16日 岐阜地方気象台で御嶽山と活火山の話をした。その後、濃尾地震の原記録を閲覧しに、地震計測室に入った。原記録は温度と湿度が制御さ れるキャビネットにきちんと保存されていた。しかし、地震計測室は震度計が一台置かれるだけで、まさに寒々とした広い空間だった。有感地震が襲っても、波 形は見えず、「只今の震度1」と表示されるだけである。

 岐阜県にも気象庁が常時観測する活火山の御嶽山と焼岳があることから、岐阜地方気 象台にも火山防災官が配置されている。でも、岐阜地方気象台では焼岳も御嶽山も火山観測データを閲覧することができない。データを観ずにいかに防災に取り組むか、私には皆目検討がつかない。その一方、御嶽山噴火で現場に派遣されたのは長野地方気象台の職員だった。しかも、地元で結成された「火山防災協議 会」で火山活動を説明するのは本庁の火山課職員である。 

 毎日新聞の記事「気象庁:火山専門家が不足...防災官の4分の1実務経験なし」 (2015.1.19)はその火山防災官の実務経験が少ないことを指摘する。確かに大切な指摘である。私は加えて、火山データを閲覧することもできないほど、地方気象台の担当者は職務を遂行しがたい環境に置かれていることも強調したい。こんな環境で防災官に期待すること自体が無理である。地方気象台は、まさに山麓の村々と同じように、地域切り捨て政策の下に置かれている。(2015/1 /19)

 

噴火警戒レベル3ながらも立入禁止区域は4kmから3kmに縮小

 気象庁は本庁で噴火予知連絡会拡大幹事会を19日午後に開き、御嶽山での火山活動について検討した。会議では各機関から、山頂直下などの地震活動が減少し、噴気も少なくなっていることが明らかになったなど報告された。その結果、御嶽山の火山活動が静穏に向かっているとして、以下の幹事会見解を発表した。

 

「火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。また、9月27日と同規模の火砕流が発生した場合には、地獄谷方向では火口から概ね2.5kmに影響が及ぶ可能性がありますので、警戒してください。風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石に注意してください。また、降雨時には土石流の可能性がありますので注意してください。」

 

 この見解を受けて、気象庁は「御嶽山の火口周辺警報(噴火警戒レベル3,入山規制)を「火口から概ね3km」立入禁止に切り替えた。山麓の4市町村や県、国などでつくる御嶽山火山防災協議会は同日3時から木曽町で開催て、王滝村のスキー場営業も認めた。なお、このままの状況が続けば、春山のシーズンには立入禁止域を地獄谷流域を除き、2km以内まで縮小することが見込まれる。

 しかしながら、噴火時に問題点が指摘された地震観測などの監視網は、噴火後も全く拡充されていない。また情報伝達方法も具体的には対処されていない。ただ観測計画が検討されたり、情報伝達改善の議論が始まっただけである。いくら忙しいといえども、国の対応は、東日本大震災と同様に遅々というか、放棄されている。そのしわ寄せは確実に現地で積算されている。(2015/1/19)

 

噴火警戒レベルを2に引き上げる主な基準

 御嶽山噴火では、9月10 -11日に山頂直下で発生した地震が1日当たり50回を超えた。これは2007年の極小規模な噴火以来、もっとも地震が頻発した事件だった。ところが、気象庁は設けた噴火警戒レベルを2「生命の危険など周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予測される」に切り上げはしなかった。

 47の活火山では24時間、監視されていることから、いかなる場合にレベルを切り上げるか、その基準が設けられているはずだ。新聞社の記者などが苦労してその基準を調べていた。

 噴火から3ヶ月が経過したが、毎日新聞は詳細に調べ上げ、その基準を日新聞がサイトで公開した。御嶽山では1日当たり50回以上の地震発生により切り上げるとされていた。もっともすべての火山とも当然ながらも「総合的に検討する」という一文も加わっているようだ。

 

12の地震観測点ながら、山に近くで県が設置した4点は利用されていない

 御嶽山の王滝山頂には長野県が設置した地震観測点が存在しながらも、設置以来、ほとんどデータが取れていないことは知っていた。県も予算がないとほとんど修理にあたらなかった。また、岐阜県が設置したチャオスキー場の観測点は、電源をチャオスキー場にお願いすることから、スキー場が休業する夏季は欠測している。そんな観測点が多く、長野県と岐阜県が設置した計5点の地震観測点で4点が稼働していなかった。そんなお粗末な地震観測網だった。

 それでも、気象庁は監視に影響しなかったと言い切ってしまった。その一方で、監視観測が不足として、火口周辺に観測点設置を予算要求していた。故障を放置した県も気象庁が修理を要請しなかったと説明する。こういった人たちは、犠牲者や噴火後の風評で生活に苦しむ地元の人にいかに説明するだろうか。「水蒸気噴火は予知が難しい」しかないだろう。(信濃毎日新聞、2015.1.6